洋上風力発電の今:三菱商事のゼロベース見直しが示す未来
イントロダクション
日本政府は2050年カーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーの拡充を進めており、その中でも洋上風力発電は重要な役割を担っています。
1. 日本と世界の洋上風力の現状
世界の潮流
2023年の世界導入量は 約75GW、2033年には487〜488GW(約0.5TW)に達する見込みです 。
欧州、中国、台湾などでは大型商用施設がすでに稼働し、先進技術が実用化されています 。
日本の現状
現在、日本の導入量は約0.5GW未満にとどまっています。着床式・浮体式ともに実証フェーズで、まとまった商用化はこれからです 。
政府は2024年末までに5.1GWの案件形成が進んでおり、2030年に10GW、2040年に30〜45GWを目標としています 。
2. 日本洋上風力を取り巻く政策と制度
2019年の「再エネ海域利用法」施行により、一般海域でも長期利用が可能になり、開発の枠組みが整備されました 。
2024年3月には排他的経済水域(EEZ)でも洋上風力が可能となる法案が可決され、より広い海域で大規模案件の展開が見込まれています 。
3次入札ではJERAや丸紅などが選定され、洋上風力10GW/2030年、45GW/2040年の目標に向け実装が進んでいます 。
3. 洋上風力の技術的・経済的課題
技術面
着床式は水深の影響を受けやすく、浮体式は技術と製造チェーン整備が未成熟で高コスト 。
必要な環境整備、施工船・設備の確保など工学的課題が山積しています 。
経済面
日本は建設費・運営コストが欧州に比べて高いため、国際競争力強化が喫緊の課題です 。
為替・インフレ・金利上昇も収支に影響し、コスト反映が進んでいます 。
4. 三菱商事の洋上風力事業、ゼロベースで見直し
三菱商事は秋田県・千葉県の3海域プロジェクトについて事業性を再評価すると発表しました 。
2024年4~12月期には522億円の減損損失を計上し、洋上風力が「曲がり角」にあるとの認識を示しています 。
背景には、インフレ・円安・金利上昇の影響によるコストアップがあり、風況や採算性など全体をゼロベースで見直す方針です 。
5. 展望と戦略的示唆
日本の洋上風力は、2030〜2040年の目標に向けた政策整備が進む一方、施工・調達・資金の課題が重くのしかかっています。
三菱商事はこのタイミングで「収支バランスの再点検」を行うことで、事業の選別・スリム化・技術調整を意図しているようです。
政府の導入推進、EEZ拡張、技術評価、コスト削減が連動する中、このゼロベース見直しが業界全体に波及し、より実現可能性の高い開発に資する可能性は高いでしょう。
まとめ
項目 現状 留意点
海外導入 進展中(欧州・中国) 技術成熟度高い
日本の導入量 現在0.5GW未満 2030年10GW目標
制度整備 再エネ法・EEZ法可決 大規模案件整備へ
技術課題 浮体式等未成熟 サプライチェーン未整備
三菱商事 522億円減損・再評価 事業選別中
洋上風力は政策・技術・経済の三面で転換期にあります。三菱商事の大胆な見直しが業界の収益性・持続可能性に対する新潮流を生むきっかけとなるか注目です。
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